平成25年9月
=会長談話=

知的財産権関係業務の業際に関する留意について
~他士業制度及び他士業法の理解と遵守~

日本行政書士会連合会
会長 北 山 孝 次

 去る6月に東京都行政書士会の会員が弁理士法違反で逮捕されました。同会員は弁護士事務所でアメリカ人弁護士の商標登録等の出願業務を補佐していましたが、弁護士の死後も不適切な手段により、商標登録等の出願業務を自ら行い、報酬を得ていたというものです。
 また、平成21年には栃木県行政書士会の会員が商標出願代理を行い、その結果として、特許庁長官による特許法第13条第2項(商標法第77条第2項において準用)に基づく改任命令が発せられたという事案も発生し、当会から各単位会長宛てに、平成21年5月11日付け・日行連発第165号「他士業制度及び他士業法の理解と遵守について」という文書を発信し、注意喚起した経過もありました。
商標権、特許権等の知的財産権のうち産業財産権に係る出願業務は弁理士(弁理士法第75条)と弁護士(弁護士法第3条第2項)にのみ認められたものです。一方、著作権や種苗法による新品種育成者権などの登録に係る手続きは、逆に弁理士がなし得ない行政書士固有の業務です。このように出願や登録申請等については、業際の明確な排他的な知的財産権関係業務です。
 昨今のTPP交渉で著作権等の保護期間が議論されるなど、かつてなく知的財産権に対する国民的関心が高まってきました。また、事業者にあっては、財産権としての知的財産権の保護に止まらず、ノウハウ、ブランドなどのほか、経営理念、組織力などの無形の経営資源の有効活用に対する機運が高まっております。そのため、経済産業省が推進する知的資産という概念が定着して、知的資産経営報告書の作成が行政書士の業務として確立しつつあります(月刊日本行政2013.4 No.485 トップメッセージ「知的資産経営のすすめ」参照)。
 会社設立や営業許可等の許認可等業務を通じて、日頃から各種事業者との接点の多い行政書士が、知的財産権、知的資産について相談を受けるということは当然にあることです。だからと言って、弁理士の独占業務を侵害するような行為は、決して許されるものではありません。自らに刃を向けるような行為と銘記すべきです。
 多くの会員が携帯している行政書士手帳に「行政書士必携~コンプライアンス確立のために~」が添付されており、また単体でも会員への配付を準備しているところですが、これには他士業との関係について触れておりますので、会員各位におかれましては精読をお願いいたします。更に中央研修所では、新入会員を対象とし業際問題にも踏み込んだ「コンプライアンス研修」を全国的に展開しておりますので、このような機会においても確かな理解を深めてくださるようお願いいたします。
他士業制度及び他士業法の遵守は、反面、行政書士制度及び行政書士法の遵守に適い、行政書士制度の維持・発展に不可欠です。今一度、他士業制度及び他士業法の理解と遵守をお願いいたします。

以上