知的財産権の保護・利用をしたい
著作権は、特許権や商標権と異なり、出願・登録することなく著作物の創作によって自然に発生しますが、著作権譲渡の際の対抗要件具備などのため、著作権法上登録制度が用意されています。
文化庁への登録申請業務は、行政書士の専管業務となっています。
また、著作権管理ビジネスを行う際の事業者登録を著作権等管理事業法に基づいて行います。
全国6,100名余りの著作権相談員を通して、また、不正商品対策協議会(ACA)や一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)等と連携して著作権を含む知的財産権の保護・啓蒙活動を行っています。
2019年には国立大学法人山口大学、一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会、日本行政書士会連合会が三者協定を締結し、著作権教育にも取り組んでいます。
他方、農業分野における知的財産権業務として「品種登録制度」があり、植物新品種登録者に育成者権が生まれます。
この新品種を保護する制度により、多様な新品種の育成が活発となり農業の発展につながっています。
農林水産省への品種登録制度の支援も行政書士が行っています。
また、地域には長年にわたり培われた特別な生産方法や気候・風土・土壌などの生産地の特性により、高い品質と評価を獲得するに至った産品の登録申請並びにこれら産品のうち、品質、社会的評価その他の確立した特性が、産地と結び付いている産品について、その名称を知的財産として保護する制度が「地理的表示(GI)保護制度」であり、この制度の確立支援も行っています。
知的財産権分野において、行政書士は以下のような様々な活動を行います。
①著作権分野
- 著作権者不明等の場合の裁定申請
- 著作権登録申請
- プログラム著作物登録申請
- 著作権等管理事業者登録申請
②産業財産権分野
- 特許権・商標権等の移転登録、実施権の登録申請など
③農業分野
- 種苗法に基づく品種登録出願
- 育成者権の移転登録申請
- 育成者権の専用利用権設定登録申請
- 特定農林水産物等の名称の保護に関する法律に基づく登録申請(地理的表示(GI)保護制度)
- 農産物の販路開拓や六次産業化の確立支援
- 資金調達支援(スーパーL資金や一般の銀行融資)
- 企業の農業参入支援
- 農ハウに係る営業秘密の保護支援
- GAPやHACCP等の策定やコンサルなど、認定取得に向けた支援
④契約業務
- 著作権・特許権・商標権・植物新品種登録制度による育成者権等の売買、ライセンス契約における代理人としての契約書作成、秘密保持契約書の作成、権利関係の調査、コンサルティング
⑤その他
- 半導体集積回路の回路配置利用権登録申請
- 侵害品輸入差止申立手続
- 営業秘密管理体制の構築業務
- 公証制度活用など
【著作権相談員】
日本行政書士会連合会では、政府の知的財産立国政策、文化庁の著作権行政の意向を踏まえ、事業者や地域の著作権相談に対応できる行政書士を「著作権相談員」と位置付け、同相談員を養成することを目的に、「著作権相談員養成研修」を実施しております。
研修内容としては、著作権の基礎知識と著作権申請業務に必要な知識の修得としています。
本研修を受講し効果測定に合格した者を「著作権相談員」として「著作権相談員名簿」を作成し、関係機関(文化庁、公益社団法人著作権情報センター、一般財団法人ソフトウェア情報センター)に提出しております。
令和6年9月20日現在の名簿を添付のとおり公表いたします。
「知的資産・知的財産 」に関するQ&A
最近、知的資産という言葉を聞きますが、知的財産との違いは何ですか?
知的資産は、特許や商標権・著作権などのほか、発明アイデア・ノウハウ・ブランド・ビジネスモデルなどの権利化されていない知的財産を含み、更に企業の経営理念や人材・技術力・組織力・信用などの経営資源として活用できる無形資産をすべて含む幅広い概念です。
知的財産は、知的資産の中の一つということができます。
知的資産経営とはどのようなものですか?
上記で説明した、知的財産のほか経営理念や人材・技術力・組織力・信用などの、企業の強みとなっている知的資産を積極的に活用する経営戦略を「知的資産経営」といいます。
外からは見えにくい企業の強み(知的資産)をアピールするために「知的資産経営報告書」を公表することが勧められています。
行政書士は、中小企業の知的資産経営を外部専門家として支援しています。
著作権法で保護される著作物とはどのようなものですか?
創作した著作物のすべてが著作権法で保護される著作物とはなりません。
「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」とされています(著作権法2条1項1号)。
アイデアやありふれたものについては、著作権が発生しないわけです。
そのほか、事実の伝達にすぎない雑報や時事の報道も著作物性がありません(10条2項)。
著作物の著作者は、法人もなれるのですか?
特許法と異なり、著作権法では、原始的に法人も著作物の著作者となることができます(15条)。
この場合、法人は著作者人格権の主体となります。
著作権は一部だけ譲渡することができますか?
著作権はその全部又は一部を譲渡することができます(61条1項)。
ここでいう一部の譲渡とは、複製権、上演権、演奏権、上演権、公衆送信権といった支分権ごとの譲渡の意味とともに、例えば、複製権のなかでの利用態様として出版を内容とする権利と録音権を個別に取扱うことも可能です(加戸守行「著作権法逐条講義五訂新版」369頁以下)。
どういう場合が著作権侵害となりますか?
例えば、他人の小説をコピーして出版した場合、他人の小説を見て真似て(依拠性)、そのままコピーして(類似性)、出版した(利用行為)ことで複製権侵害となります。
類似した書籍が出版されていても、依拠せずに創作された著作物である可能性もあるので注意が必要です。
著作権の登録制度による保護について教えてください。
例えば、著作権を譲渡した場合は、対抗要件を具備するために著作権移転の登録をすることで保護に資することとなります(77条)。
そのほか、実名や第一発行年月日、創作年月日(プログラム著作物)などの登録をすることができますが、行政書士はこうした登録手続業務を行っています。